運転免許

免許更新時に買わされる資料は確かにいらない。その前に、交通安全協会と安全運転センターの違いが分からない人のために。

現在行われている公益法人を対象にした政府の事業仕分け第2弾で財団法人「全日本交通安全協会」の最も収益を上げている事業である、運転免許更新時講習に強制的に買わされる数冊の資料の販売について仕分け人側からハッキリと「NO」が突きつけられましたね。

確かに教本自体の存在意義もさることながら、その莫大な利権を独占している仕組みそのものには大きな問題がありそうです。

仕分け人側は「ある県では『警察庁の監修で当協会が発行しており、ほかからは購入できない』ことを随意契約の理由として公表している」とした上で、「協会が独占受注する構造になっている」と強調している。
事業仕分け 教本32億円…運転免許利権にメス:iza

それにしても少し前に書いた記事で、自動車安全運転センターの理事公募について疑問を投げかけた私ですが、今回ニュースを見ながら頭が混乱してしまいました。
「交通安全協会と安全運転センター・・・一緒じゃん、いや違うのか?わけ分からん」
きっとこんな人が世の中に山ほどいるだろう、むしろその違いを知っている人なんているのか?というわけで今回は事業仕分け人よろしく両者の違いとそれぞれの存在意義に迫ってみたいと思います。

そもそも交通安全協会と安全運転センターって同じじゃないのか?

ハッキリ言ってその名称を見比べる限りでは、両者の事業内容に違いがあるとはちょっと思えません。あえて名称から推察するに、
■交通安全協会・・・運転手だけではなく歩行者なども含めた道路交通の安全に関する全般的な活動を行う
■安全運転センター・・・より自動車のドライバーに対する安全運転への意識を高める活動を主に行う
という感じでしょうか?なんだか少し見えてきたような。

続いては両者の公式HPからその違いについて見比べてみましょう。

『交通安全協会』『安全運転センター』の基本情報
名称 財団法人 全日本交通安全協会 安全運転センター
本部所在地 東京都千代田区九段南4-8-13
自動車会館7階
東京都千代田区二番町3番地(麹町スクエア6F)
代表者 今井敬(会長) 小林武仁(理事長)
役員数(注1 45人(平成22年3月24日現在) 9人(平成22年2月1日現在)
事業収入(注2 約39.7億円 約71億円
法人の種類 公益法人 特別民間法人
所管 警察庁 警察庁
(注1:理事の数(常勤、非常勤含む)
(注2:平成20年度のもの、雑収入なども含む

本部所在地は同じ東京千代田区でも微妙に違いますし、代表の方も違うので完全に別な団体であることが分かりますね。しかし両者とも所管が警察庁となっておりその設立などは警察庁が主導していることが伺えます。
それにしても、見比べると役員の数と事業収入は比例しているわけではなさそうですね。理事数45人の交通安全協会の収入がおよそ40億円なのに対して安全運転センターは理事数たった9人で71億円も稼いでいます。ただ、役員以外の職員数が不明だったため単純に比較はできませんが。

両者で大きく違うといえるのが法人の種類で、交通安全協会が公益法人、安全運転センターが特別民間法人となっています。なるほど、だから政府の事業仕分けで交通安全協会だけがやり玉にあげられたわけですね、ナットク。

更に比較のために両者の事業内容を比べましょう。

主な事業・活動内容
財団法人 全日本交通安全協会 安全運転センター
交通安全国民運動中央大会の開催 安全運転の研修
全国交通安全運動の共催 交通安全教育の実施
交通安全年間スローガン、交通安全ポスターデザインの募集と普及 交通事故の証明
反射材フェアの開催など反射材の普及促進 運転経歴の証明
ハンドルキーパー運動の推進 SDカードの発行
交通安全ファミリー作文の募集 累積点数の通知
交通安全アクション等への参画 調査研究の実施
交通安全広報の推進

こうして両法人の事業内容を並べてみるとハッキリと特色が浮き彫りになりますね。

交通安全協会は交通安全への啓蒙活動が主な活動内容と見ては取れますが、その具体像はぼやけているような気がします。一方の安全運転センターは研修だとか教育だとかSDカード発行、累積点数の通知、調査研究などなど事業内容としてはもっと分かりやすく、なるほどねとナットクできる内容だと思います。

この両者の違いは、公益法人と特別民間法人という法人格の差によるものが大きいように思われます。交通安全協会の事業内容はその背景が非営利目的であることからしても、民間法人にはできそうもない内容です、こりゃ儲かりそうもないですね。安全運転センターは特別という冠がついてるものの、さすがに民間法人化されているからか、より具体的に収益に結び付けられる事業内容になっています。

スーパーウルトラベストセラー「講習用教本」はナント1400万部!

上で書いたようになんだか儲かりそうにない交通安全協会の事業内容ですが、ちゃんと儲かる仕組みがあるようです。

交通の教則(平成21年度版)
年32億円を売り上げる教本の1冊

免許の更新時には無事故・無違反でも必ず講習を受けることになっていますが、その講習時に配られる数冊の教本、それらが莫大な収益をあげているそうです。

その中の1冊「交通の教則」平成21年度版は何故か「ちびまる子」ちゃん一家が登場して交通安全を説くという不可解な内容となっています。
イメージキャラ自体の採用は大いに結構だとは思いますが、なぜにちびまる子?と、この本を貰ったとき密かにツッコミを入れたのは私だけではないはずです。だいたいちびまる子一家が車で出かけることなんて稀だし、父ヒロシなんて完全にペーパードライバー(イメージ)だし。いや、だからこそ安全運転が大事だよ、というメッセージなのか?

脱線してしまいましたが、イメージキャラうんぬんは置いといて、この本確かに中身は交通ルールに関する教本としては良くできていると思います。が、事業仕分けでも指摘されていたように免許更新時の講習ではほとんど使った覚えがありません。

免許更新の講習といえばビデオ鑑賞と教官?指導員?のお話がメインといった感じですよね。数冊配布される教本は配るだけ、といっても過言ではないと思いますが、よくよく考えてみればそれら教本の代金も講習費用にしっかりと含まれているわけですよね。

講習の受付時に何故か徴収しようとする、謎の交通安全協会費なるものと同様にその存在にはいささか疑問符が付きそうです。というか事業仕分けによって実際に付いたわけですが。
ただ、このまるちゃんの教則本ですが、巻末のほうに掲載してある交通違反の点数一覧だけは見てしまいますね。そこだけプリントして配ってくれればそれで済みそうな気はしますが。

両者の違いは何となく分かった。ただ、存在意義はあるのか?

私の結論から言えば、交通安全協会・安全運転センター共にそれぞれ役割が違い、それぞれに存在意義があるように思います。
交通安全協会は交通安全の啓蒙活動という民間法人にはできそうもない役割がありますし、安全運転センターはそもそも民間なので存在意義うんぬんという話にはそぐわない、問題なのは教則本のような排他的な独占事業を持っていたり、両者とも理事の多くが所管官庁出身者だったりと批判されても仕方がない部分はあります。

ただ一つだけ交通安全協会にお願いしたいのは、交通安全協会費をそれとなく徴収するのはやめて頂きたい、ということです。まあ、払ったことはないんですが。
今回は非常に長文となってしまいました。最後まで読まれた方いらっしゃいましたらありがとうございます!

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